先日、人気洋菓子店の元従業員の男性が、運営会社に未払い賃金約200万円の支給を求める労働審判があり、大阪地裁は約90万円の支払いを命じた。
今回の事の発端は、人気求人サイト「インディード」を閲覧し、菓子製造の仕事に応募したことだった。
サイトには「月給35万~50万円(残業代を含む)」「週休2日制」と待遇情報が掲載されており、人事担当者からも面談で同様の説明を受けていたとのこと。
男性は勤務開始から1ヶ月経過後に会社より雇用契約書が示され、「基本給16万~25万円」となっていた。明確な残業代の記載がなく、工場長とのやり取りで「月給は35万円」と口頭で確認もできたため、男性は署名したようだ。
しかし、3ヶ月間の試用期間中は25万円だった月給が、期間終了以降は約17万円に減ったという。減額理由の説明がなく、男性は今春に退職し、8月に労働審判を申し立てた。
ニュースを読んでいると色々な問題点があることをお判りいただけるだろうか。
①サイトには「月給35万~50万(残業代を含む)」と記載があったにも関わらず、雇用契約書の金額はそれ以下であった。そして試用期間を経た後の月給は更に減額がされている。最終的な月給は約17万円と当初の金額の半分以下になっている。
②勤務開始から1ヶ月経過後に雇用契約書の取り交わしが行われているが、本来雇用契約書の締結は入社時(=採用時)である。
③労働契約法によると「労働者と使用者が合意をすれば、労働契約を変更できる」とあり、また職業安定法は会社側が労働条件を変更する場合、労働者に内容を明示することを義務付けている。しかし今回の男性の場合、試用期間終了後の月給が減額した理由について説明がなかったようだ。
ここで皆さんにお伝えしたいのが、労働契約の基本原則だ。
以下の原則に基づいて契約の締結や変更を行うことが必要となってくる。
(1)労使の対等の立場によること
(2)就業の実態に応じて、均衡を考慮すること
(3)仕事と生活の調和に配慮すること
(4)信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはならないこと
そして労働基準法では使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件についての最低限明示しなければならない。また、遵守事項として
・労働条件に虚偽の情報または誇大した内容を加えないこと
・試用期間と本採用が1つの労働契約であっても、試用期間中と本採用後とで労働条件が異なる場合には、それぞれの労働条件を明示すること
・労働条件に幅がある場合(例:基本給25万~30万円/月)には、範囲を可能な限り限定すること
・労働条件の変更は速やかに、分かりやすく伝えること などがある。
今回の件ではすべて無視されているようにしか思えない。
果たして会社側は審議に従い誠実な行動をしていたのか疑問を抱くばかりである。
多くの求人詐欺が無くならない理由としては、求人内容が虚偽であることの証明が難しく、罰則が緩いため抑止力になっていないこと、被害を訴えるハードルが高いことである。
誰も最初から求人詐欺にあうことなど想定などしていない。弱みにつけこむ悪質な詐欺である、と私は思う。
何事も疑ってかかる人生もありだ。
世の中に潜む危険を知っているからこそ、自分自身も人も守ることができる。
軽率な行動をせず慎重に着実に大切なものを守るその生き方は立派である。
これだけ語っているが今回の問題となった会社の洋菓子は美味しい。
今後も食べ続けたいと思うからこそ、労務関係等を改善しより良い会社作りを行ってほしいと切に願うのであった。
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